工務店 佐渡 takumi-2jamの日記

佐渡島で自然素材をふんだんに使った家づくりに取り組みながら、気ままに書き綴っています。

佐渡 U&Iターンツアーによる再生民家見学を終え《総論》

佐渡市のウェブを見ると、平成20年10月1日現在佐渡市の人口は65,850人、所帯数は25,232戸。
佐渡に住んでいる自分でさえも超・少子高齢化を感じる島である。

先日、佐渡市の企画したU&Iターン佐渡体験ツアーが実施され、僕は再生した古民家を紹介させてもらった。
ツアー参加者は平均で50代から70代の人達が多く、来島後最初の見学場所であった「再生民家の見学」にも大変興味を示して頂き、僕としても嬉しかった。
後日関係者にツアー全体の様子を聞いた所「再生民家の見学とIターン者の経験談が企画の中で最も参考になり、喜ばれた」と話されていた。手探りムードもある初回のツアーだったと思うが、関係者にとっても先ずは手ごたえを感じた催しだった様だ。
21日付の新潟日報にもこの催しの記事が載り、次年度以降も年1回程度のツアーを企画する予定、と書かれていた。

思い付くまま総論を書き出してみる。

【受け入れ体制の確立、コンシェルジュの確保】
再生民家見学のお礼をお施主さんに伝えた所、以下の様な返事を頂いた。
「前略…移住してきた人へのフォローをどうするかです。コンシェルジュの役割を果たしてくれるボランティアがいないと、他所から来た人には馴染めず、住みにくさを実感するだけになる…後略」
この返信を読み、自分自身の事を振り返りつつ今後の事を考えた上で、島全体で考えた方が良いテーマだ、と勝手ながら思った。(かといって自治体任せという意味ではない。)
佐渡全体で、本格的なU&Iターンの受け入れ体制を!!」と書けば大袈裟かも知れないが、今後の佐渡を想う時そのような考え方(ヴィジョン)を示してもよいと思うし、自治体だけでなく民間の各業界がこのテーマで取り組むと佐渡も変わってくる気もする。

《受け入れ体制「体験+人」:短・中期間かけて佐渡を体験できる民家》
U&Iターンの取り組みは、全国の事例をみると数日で済ませる体験ツアーだけでなく、(1次産業体験も兼ね)数か月や1年通して生活してみる、といった中期体験型の取り組みも好評のようだ。
地域の事を知らないまま定住に踏み切るより、中・長期的な佐渡体験をして、地域になじむウォーミングアップが出来たら生活もし易くなると思う。またその滞在中、既に住んでいるIターン者との交流をする事により「佐渡での田舎暮らし」への理解も深まる。
過疎集落の多い佐渡でも、持ち主の了解を得れば、すぐにでも実施できる気もするが、一方で佐渡(出身)人自身も「使っていない空家を、人に貸す」事へ抵抗感が少なくなれば更に良いと思う。
念のため…僕は、自治体に「短・長期の体験滞在型建物の新築」など税金使って建てて欲しいとは思っていない。あくまで「空家の有効利用」と「Iターン体験」という”本質”に取り組んで欲しい、と思っている。

《受け入れ体制「人+情報」:佐渡コンシェルジュ
佐渡島は結構広く、多くの集落が点在している。
点在している集落では(良し悪しは別にして)昔からの風習をそのまま受け継いでいたり、今の生活に合わせある程度合理化していたり様々なようだ。また風習以外でも芸能熱心な地域では、その集落総出で練習に励むといった話を聞いた事もある。

コンシェルジュという言葉は「よろず相談できる人」を意味している。
佐渡の慣れない生活習慣や風習の相談にのってくれるIターン者が多く居れば、これからターンを考えている人達にとっても不安が少なくなる。
自治体からの呼びかけで、多くのIターンの方達が(ボランティアの)コンシェルジュになってもらえたら、と思う。

《受け入れ体制「土地と建物」:土地と建物の選択肢を広げる》
市のウェブでも20件近い空き家情報が載っているが、島内の不動産業者のモノを合わせると相当な数になるようだ。
程度のよさそうな古民家物件もあるが、価格面や土地の広さの面で購入するには高かったり、広すぎたりしている課題もある。
また古民家の建っている土地は、納屋や土蔵もある為不動産業者からすれば「そのままじゃ売れない」と思われ、すべての建物を解体、整地し、分割してから分譲販売している土地も多い。解体費や造成費といった大きな費用をかけて更地にした後で、土地の販売をしているのが実情。
土地はある程度コンパクトにしても「格安の古民家付き不動産販売」というのが有っても良い気がする。

佐渡の自治と医療》
先月お父様を亡くされたお施主さんと、佐渡の医療について話をした。
島外に嫁ぎ、親の身を亡くなるまで心配し、故郷の佐渡に通い続けた彼女の経験談は僕にも痛く、悲しかった。
「身内の命を預けているのに、ドクターは週末休みで新潟へ帰っていて、容体が悪くなっても対応できずにいた。」
「詳しい検査は、新潟の方で…とドクターから言われた。」等々。

佐渡の医療について、不安を持っている人は多いのではないだろうか。

(詳しい事はわからないが)現在佐渡では佐渡総合病院の建て替えの計画が進んでいて、病院運営側が自治体に30億円出資を要請した事で議会が揉めた、という地方ニュースが数か月前に流れた。
全国ニュースでも「地方の医師不足」が流れる昨今だが、佐渡も例外ではない。

高額な費用をかけ建物や医療機器だけが真新しくなる総合病院よりも、患者の身になり人材を含めた医療体制の確立を重要視して欲しい、と僕も思う。
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ツアーを終えて数日経った今でも、僕の頭にツアー参加者からの言葉が残る。
「この物件の様な、雰囲気の良い建物(古民家)を、佐渡の人は大切に使い続けているのですか?」
「土地だけでなく古い民家ごと譲ってくれる人はいますか?」
佐渡に移住してから病気になっても、ちゃんとした病院は佐渡に有りますか?」