工務店 佐渡 takumi-2jamの日記

佐渡島で自然素材をふんだんに使った家づくりに取り組みながら、気ままに書き綴っています。

佐渡 ローコスト&建売り住宅について

仕事柄、住宅の建築(新・増改築)や購入などに関するいろいろな相談を受ける事が有ります。
家を建てたり、直したり、購入したりする事を、一生に一度の大事(だいじ)と思うのは当たり前ですし、家づくりに関し相談する専門家のないまま進めてしまうとたいへんな事になりますので、今回もブログで掲載する事にしました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

最近、或る方から「(ローコスト)建売り住宅」の購入について、相談を受けました。
僕が工務店を運営する立場ゆえに、(仕事上のネタミやヒガミといった)誤解を招いてはいけないので、あくまで一般論で返事をしました。
以下、長文になりますが御一読ください。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「全般的なこと」
まず建売り住宅は、平均的な平面計画や装備(水周りの住設機器など)で出来上がっているため、購入者の欲求を十分に満たすモノ、とはなかなかいきません。
ここ数年で、都市部で建売り住宅の着工件数が伸びていたり、人気があるのは、(買い手となる)人口が多いことに加え、商品のバリエーションも豊富な上に、立地条件が大きく影響しています。
しかし佐渡では、人口も少ないため「土地造成した場所を売る為の手段」として、建売り住宅が建てられている様に、思います。(開発行為にともなう条件などが影響しています。)


またどんな建売り住宅にも共通するのは、すべて仕上がっている為「どんな作られ方(施工)をしているか、判らない」事も挙げられます。
仕上がっている以上、剥がす訳にもいきませんので、下地の木材の位置や種類、クロスの下の建材は判別しにくいものです。

以下、ローコストを含めた建売住宅を購入する際のチェックポイントを書き出してみます。

「即決は避ける」
仕上がってしまっている以上、住宅に関し(先に述べた)不明な点を抱えながら「購入するかどうか」を判断する事になります。
しかし「それでも良いんだ」と判断すれば、あえて立ち止まって考える事や専門家に相談する事は必要ありませんが、即決(契約を急ぐ事)だけは避けた方が良いと思います。
なぜなら建売住宅の場合は、他社との比較も容易であるためです。

「どの程度の妥協ができるか」
建売り住宅は平面計画も決まっていて仕上がっているので、自由度もありませんので、「ある程度妥協して購入する品物」だと買い手自身が割り切る必要があります。
そしてローコスト建売り住宅は「かなりの部分妥協して購入する品物」ということになります。
(それは材料のグレードや作り方に関しても妥協する場合があると思います。)

「購入後の維持管理も考慮して」
購入者は一時的なローコストの金額だけに目を奪われて建売住宅を購入せずに、5年後、10年後にその品物がどうなっているかも考えておく事をお勧めします。
多くの建売住宅では、種類の豊富さや防火面を前面に打ち出して防火サイディングを外壁に使用していますが、この外壁材は5〜10年以内に塗装を施す必要も出てくることが多いのです。
また屋根材もよく調べて長持ちする材料を使っているかどうか、専門家への相談やインターネットなどで調べてみることをお勧めします。
ローコスト化している屋根では、工場建築などで使用されているルーフデッキという山谷の付いた鋼板を使用しているのを見かけます。
この材料の場合は、長持ちするかどうかの判断も重要ですし、天候が雨やアラレの際には、屋根を叩くすごい音がしますので、防音対策をしているかどうかの事まで考えてご判断した方が良いと思います。

事例として挙げた屋根や外壁は、直したり張り替えたりする際には足場の工事も必要となり、古い材料の処分を考えれば修理費も大きくなります。ですから購入後5年や10年でそれらの補修工事費が(住宅ローン返済とは別に)工面できるかどうかもお考えになった方が良いと思います。

「瑕疵担保保険の加入義務」
昨年の10月以降に新築された住宅では、数年前の違法建築事件を受け建築の法律が厳格化され建売住宅でも、売り手側は「瑕疵担保履行法に基づく瑕疵担保保険」に加入しなければならなくなりました。
たとえば地盤の状況を調査せずに着工したり、地盤の悪いのに地盤の改良もせずに建物を建てたり、基礎の配筋が不足したり、木造の骨組みや構造補強などは「保険加入時に保険会社から委託を受けた検査員がチェックしていますので、その検査結果と保険の加入した証明書が売り手側から提示」されれば、(グレードは別にして)一定レベルでの骨組みや屋根が施工されている、と思えるでしょう。
この保険に入っているかいないかも、購入時の重要なチェックポイントです。

注文住宅を造り続けている立場で書くならば、家づくりに関して、何も知らないまま建てたり、専門家のアドバイスも無しに建てる事は避けた方が良い、と僕は思っています。
加えて、使い勝手や、動きやすさを考えた平面計画や仕上げ材、水回り機器にしても、その土地とお客様の要望に合ったものを打ち合わせしながら、現場の管理をしっかりとして一緒に作った時に、居心地の良い住宅は出来上がると思っています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「最後に」
今回掲載した文は、決して建売住宅を販売している事業者をとやかく非難している訳ではありません。その事業所なりの事情と経営戦略があるから建売住宅を売っている、と僕も理解するからです。

この文は特定の相談者への返答ではなく、これから佐渡で建売住宅を購入する人や家づくりを正面から考えてみようとする人たちの参考になればと思い、いろいろ考えたうえで掲載することにしました。

掲載にあたっての趣旨をご理解いただきたいと思いますし、長文をお読みくださったことを感謝申し上げます。

㈲川上工務店 川上 巧