工務店 佐渡 takumi-2jamの日記

佐渡島で自然素材をふんだんに使った家づくりに取り組みながら、気ままに書き綴っています。

新潟 ヘリマネ3/十日町にて

過日ヘリテージマネージャー養成講座の第3回目が、十日町の旧・松代町地区で行われました。
会場は、移築再生した古民家「まつだい郷土資料館」でした。

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講義内容は「旧・室岡家住宅(まつだい郷土資料館) 建築物としての文化財価値」「歴史的建造物の保存修復における耐震計画の考え方について」と「まつだい郷土資料館の工事について」でした。
最初の「文化財価値」では、先日も講義された山崎先生が担当され、中盤の「耐震計画の考え方」では、清水先生が担当されました。

「建物の特徴・変わった所=価値」
この移築民家の場合は、年代的に古い(昭和10年築と思われる)のに加え、間取りに特徴がある点が価値として認められた、と話をされました。
変わった所?特徴?・・・それを、理解するには数多くの民家を見る必要が有ります。
これからの経験で、補う必要性を感じました。

耐震診断と補強について」

歴史的建造物を取り扱う上でも「耐震診断・補強」について指針があり、文化庁としては、保存修復する場合も《重要文化財の基準に準拠するよう》指導している点に、納得はしつつも正直「う~む」と唸りたくなる気がいたしました。
またヘリマネではまず出来ない「専門的な耐震診断」を構造の専門家に依頼する事になります。

「修復し耐震化するのは、それほど大変なんです。」という説明を聞きながらも「古い建物の再活用の幅が狭くならないのかな?」と素朴に思いました。
※上記はあくまで個人的感想です。建物の内容にもよると思いますので、私的思い込みには、気を付けなければいけません。

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あらためてヘリマネで学ぶ「国登録有形文化財の申請」というのは「持ち主が(ヘリマネと地方自治体を通じ)国へ文化財として登録して欲しい」とお願いする主旨です。
決して国から「アナタの住んで居る古民家を、是非文化財に指定させて頂きたい」という事ではありませんので、お気を付け下さい。

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《講師の先生方》

「まつだい郷土資料館の工事について」
工事については、この工事で設計・監理をした女性建築士の富井さんからお話がありました。
《現場調査を綿密にしても図面化した時に食い違う古民家》という話では「昔の人々は、緩い家づくりをしていた」と理解しつつ「食い違って当たり前」ぐらいの気持ちで居た方が良いという話をされました。
通り芯がいくつもあり、それが微妙にずれている事を気持ち悪く思わなくてもイイですよ、という事でした。

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《まつだい郷土資料館の全景》

続いての話《耐震診断と補強を検討する際に、必要な図面》については、やはり現場調査の精度がとても大事であることが分かりました。(たとえズレテイテモです。)

工事管理の話では、塗り壁や三和土など昔ながらの方法で再生した事例紹介をして頂き、職人の技術継承について私的に考えました。
「昔は、こういう風な作り方をしたが、今それを再現できる職人が居ない」では、修復は机上で終わってしまいます。

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「雑感として」
この移築再生工事は、市町村合併にともない総務省から配分された「合併特例債」が使われていました。(古民家の移築再生工事と周辺整備で3億円!)
その為でしょうか、なかなか自分たちが取り組む様な実感が湧いてきませんでした。

やはり私にとって、キーワードは『活用』だ、と思います。
古い建物を直しても、活き生きとし続ける場を作り出せるか、どうかが課題なのです。

佐渡に戻る船の中で、新潟県南魚沼市にある「里山十帖」のオーナーである岩佐 十良さんが書かれた『里山を創生するデザイン的思考」という本を読み始めました。
ヘリマネの講座に参加し続けながらも「活用」について、考え方を深めて行きたいと思います。