工務店 佐渡 takumi-2jamの日記

佐渡島で自然素材をふんだんに使った家づくりに取り組みながら、気ままに書き綴っています。

長岡 ヘリマネ6/法末集落で学ぶ

この度の台風18号などに伴う大雨で被災された皆様へは、心よりお見舞い申し上げます。また早い復興を佐渡島より願っています。

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中越大震災から10年余り経った長岡の法末(ほっすえ)集落で、ヘリマネ講座の6回目は行われました。

講師は、新潟建築士会で常務理事をされている渡辺斉さんと新潟大学の黒野弘靖教授の2名で、渡辺さんからは「中山間地を襲った大震災からの復興と地域再生の取り組み」の講座を受け、黒野教授からは「農村住居の価値と調査」というテーマで講義を受けました。

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『中山間地を襲った大震災からの復興と地域再生の取り組み』
まず渡辺さんの講義では、大震災から時間をかけて地域再生(復興)してきた経緯のお話があり、被災後の速やかな調査と仮設住宅などを含めた早い対応が肝心であることや、集落ごとに異なる地域再生の有り様「その地域らしい再生」が大切だという内容が私には響きました。
また集落の人の結束力は、復興の速度に大きく影響する話をされました。
訪ねた法末集落は、集落の人がまとまり力を合わせ被災直後の孤立した状況から自助努力で身を守った地域でもあります。(薪集め、清水汲み、その他の応急作業分担など)

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《講義風景:渡辺さん》
ただ(仕方がなくも)惜しまれる事は、こうした大災害の復興では被災範囲や規模も大きくなるので、復旧対応がどうしても大手会社の元請取扱いになりやすく、地元や近隣の業者は下請けで仕事を受けている事は、地方経済の復興支援からやや離れる感が強いようです。(多くの支援費用が、被災地から大手会社のある別の地域へ出て行ってしまう、ことです。)

住宅の復興でも「住宅を建て、早く仮設から抜け出したい」という被災者のお気持ちはわかりますが、結果としてハウスメーカーのオンパレードでは歴史・文化を長く育んできたその町・地域らしさの復興とは遠ざかってしまう事も危惧されます。

地元や近隣の工務店が、こうした時も頑張れる(受注できる)様に普段から自助努力して行く必要が有る!と私は考えました。(その点は、今後自分でも掘り下げて考えて行こうと思っています。)

『農村住居の価値と調査』
農村住居の特質は「時間的&空間的連続性の中で成立」している事である、と黒野教授は述べました。


つまりそれは「世代を超えて受け継がれること」を反映していて「住居だけにとどまらず、周辺環境とのかかわりを把握しながら住み続けている」事に通じます。
たとえば農家住居の場合、敷地内で住居以外に、作業納屋や土蔵、家畜小屋などで一群を形成しています。また場所によりその一群を取り囲むように防風林や防砂林を植えている時もあり、そうしたスタイルの住居が集まって一つの集落をなしています。
そしてそれらが、その地域らしい風景を形成しています。

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《講義風景:黒野教授》
こうした話を聞きながら「その地域らしい住まいとは?佐渡らしい家とは?」を、これまで以上に考えるきっかけになりました。(高齢過疎地では、集落の形が人口減により崩れている場所も多いかと思いますが、その地の環境に対応した住まいづくりは大事な事です。)

また「注文された家単体」だけで住まいを考えるのではなく、その地域・環境や歴史に加え集落を考慮した設計と家づくりを心掛ける必要が有る、とも思いました。

『初めての法末集落では、驚いた!』
お二人の講義に加えて、今回のヘリマネでは集落の住宅を数件訪ねました。
法末集落の住居を見た私の第一印象は…「本来の民家の形にこだわらない、なんと思い切った増築なんだ!しかも増築の手法に共通点がある!」という事でした。
この集落の住宅の特徴は『(江戸末期から明治に建てられた?)寄せ棟屋根かやぶき平屋の玄関部分を総2階建てで増築している』ところです。また維持管理面で割り切っていると思いますが、屋根は(茅葺きに被せた)板金屋根が多く使用されています。(茅葺き民家の場合は屋根勾配もキツイですし棟や谷もいろいろ有りますから、カバー・ルーフとして板金を使用するのは頷けます。)

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同時に疑問も思い浮かびました。
①何故、こういう形にしたのだろう?
②平屋の増築であれば、本来の屋根の形も残って良かったのでは?

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《豪雪地帯の消火栓》
そういえばこの地域は、冬の積雪が5mほどになる場所です。
こちらの民家の軒先の高さ(桁の高さ)や1階床の高さも、佐渡のそれより高くしてありました。

総2階の増築については、過去の時代に家族が増えた事などの事情で増築した際に、平屋だと雪に埋もれてしまう為に2階建てで増築した可能性が高いと思います。

当たり前といえば当たり前なのですが「冬の豪雪下での生活を意識した増築」…なのでしょう。

ただし「どの家も、玄関部分を2階建てで増築している共通点への疑問」は、推測できません。他の部分を2階建てで増築しても良いはずなので「^0^」>
ただ思い付くことは「居間や座敷をちゃんと残したうえで、南面の増築を基本にする」という事や「増築に対する、この集落なりの独自ルール」が決められている可能性が高い…という事でした。
だとしたら、それはそれで凄い事ですね。
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以下、集落内の住居で撮った写真を掲載します。

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《一般住宅での見学》

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農家民宿の見学》

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農家民宿の2階コーナー》

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農家民宿の薪ストーブコーナー》
以上です。

次回は、ヘリマネ7として「被災建築の保全・修復」と「庭園文化論」を後日アップしますのでお楽しみに。