工務店 佐渡 takumi-2jamの日記

佐渡島で自然素材をふんだんに使った家づくりに取り組みながら、気ままに書き綴っています。

新潟 丈夫な骨組みで家づくりを

 過日、新潟で行われたセミナーに参加してきました。
講師は、構造設計を専門にしている新潟出身の1級建築士で、構造計算の実務だけでなく木造の耐震や地盤について深く研究されている佐藤実氏。「楽しくわかる!木構造入門(エクスナレッジ刊)」といった著書も有ります。(右リンクは、Amazonのアドレスです。Amazon CAPTCHA)以下、やや専門的で長文になりますが、ご一読いただけたら幸いです。
 また今晩9時からのNHKスペシャルでは「大地震 あなたの家はどうなる? ~見えてきた”地盤リスク”~」という番組も放送され、熊本地震の被害を地盤の解析から建物被害を振り返りますので、これから家づくりをご検討される方にはご覧になる事をお勧めします。

www6.nhk.or.jp

f:id:takumi-2jam:20170408222029j:plain
《講演中の佐藤実氏》
 
 さて今回私は、佐藤氏が主宰する「構造塾」の一環で『熊本地震 現地解体調査 報告セミナー」に参加したわけですが、家づくりする立場の一人として身が引き締まり大変ためになる内容でした。(大地震の被災状況は悲惨ですが、それを調査し得た情報をもとにした方策は今後に役立つと思いセミナーに参加しました。)
 御存知のように熊本地震は、震度7が2回続き、建築関係者でも想定を超えた地震で、建物倒壊レベルでは東北大震災を超える地震でした。(東北大震災では、地震そのものによる倒壊よりも、津波による倒壊が被災規模を拡大させたためです。)彼は、その地震直後から現地に入り調査をし続け、木造住宅の倒壊のメカニズムを研究し続けています。

f:id:takumi-2jam:20170408230229j:plain
《倒壊物件の解体調査時の写真/セミナー時の資料より転載》この解体調査時には、多くの方が全国から集まりました。
「築年数の浅い木造住宅の倒壊」
木造住宅は、(壁量計算や四分割法、N値計算といった)簡易チェックをする事で、綿密な構造計算までしなくても良い事になっています。ところが熊本地震では簡易チェックをしていた築年数の浅い木造住宅でも倒壊に至りました。
倒壊の原因として考えられることは…
①一階の壁量が法の規定範囲程度だった。(更に大きくする必要が有った。)
②直下率(上下階の柱や壁が出来るだけ一致する割合)が低い建物だった。
③水平構面(二階床とその下の構造材の一体化)が弱かった。
・・・と佐藤氏は解説します。(当時報道された、軟弱地盤だけが倒壊の原因ではない点が重要です)

f:id:takumi-2jam:20170408230018j:plain
《築年数の浅い木造住宅の破断状況/セミナー時の資料より転載》数百年に一度の地震と言われていますが、最新の建築構造金物を使用していても写真の様な状況になりました。こうした原因も、先述の3点が倒壊の引き金となっていました。
地震被害の無い木造住宅が在った」
 一方あの地震の際にも、軽微な修繕や被害無しという木造住宅もありました。その住宅は、先述の築年数の浅い建物とほとんど変わり無い時期に建てられたものでした。
 結論を先に述べますと被害の無かった木造住宅は、通常の法範囲よりも更に強度を高めた作りをしていました。専門的になりますが、倒壊しなかった住宅は《耐震等級3》で、築年数の浅い倒壊住宅は《耐震等級1》でした。
 佐藤氏は「(地震時に)命は守るが住めない耐震等級1の住宅ではなく、命も財産も守り、なお住み続けることができる耐震等級3の住宅にした方が良い」と全国のセミナーで唱え続けています。
※耐震等級は3段階有り、等級1は現在の建築基準法の範囲内で、等級1の1.25倍が等級2、等級1の1.5倍が等級3という取扱いになっています。
「今後私どものつくる家について」
 まずこれまで以上に丈夫な新築木造住宅を作る様にします。具体的には、平面計画によりますが、現在の法基準の1.25倍から2倍にする事が望ましいと考えます。(その際は有償になりますが、構造設計の専門家による検討と構造計算も行います。)
弊社は、より安全で、より快適な家づくりに精進してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。