工務店 佐渡 takumi-2jamの日記

佐渡島で自然素材をふんだんに使った家づくりに取り組みながら、気ままに書き綴っています。

佐渡 稀な機会に感謝し記録/茅葺き民家の屋根下地修繕

初夏の風吹き爽やかな晴れ間が続く佐渡島です。

f:id:takumi-2jam:20200609160523j:plain

佐渡島南東部にある松ケ崎灯台

 古い民家の改修に多く関わってきた私どもにとりましても稀な機会なので、忘備録として、そして後世の職人に役立てばと思い、このブログで記録します。

「茅葺き民家の屋根下地修繕」

 数日前から、茅葺き民家の屋根の下地修繕に取り掛かりました。
見かけることも少なくなりましたので、茅葺き屋根といっても、現代ではピンと来ないかもしれませんね。下記ウィキペディアを参考までにリンクします。

ja.wikipedia.org 

f:id:takumi-2jam:20200609162638j:plain
《屋根の既存状況:屋根先端を支える部分(茅負やツナギ梁先端)がなくなっていた》

 今回私たちは、茅葺き屋根の軒先部分にある「茅負(かやおい)」やそれを乗せる為の「ツナギ梁」の取り換え作業をしました。写真の通り既存の茅負とツナギ梁は雨漏りで腐食が著しく進み、屋根を支える強度も無くなっていました。

f:id:takumi-2jam:20200609172953j:plain

既存の屋根下地木材(上:茅負、下:ツナギ梁)とツナギ梁の型取り定規(中)

 また今回取り換えるツナギ梁は元々「しの字型」で、材料の準備も簡単に行かないものでした。木の根元部分を使う(木取りする)想定で図面を書き材料の発注をしたところ、運良く手に入りましたので、図面だけでなく現場から丁寧に取り外してきた物と形をそろえて作りました。

f:id:takumi-2jam:20200609163147j:plain

しの字形した新しいツナギ梁 
(奥に黒く見えるのが腐食して先端の無くなった古いツナギ張り)

f:id:takumi-2jam:20200609171240j:plain

内部の作業状況

f:id:takumi-2jam:20200609163807j:plain

取り付けた新しいツナギ梁と茅負

f:id:takumi-2jam:20200609165118j:plain

茅負と重ね物の取付作業中

f:id:takumi-2jam:20200609164206j:plain

新たに取り付けたツナギ梁とそれに乗る茅負と重ね物

f:id:takumi-2jam:20200609170111j:plain

茅屋根の修繕

 茅葺きの民家は、(後世の改修で建材が使われた部分を除き)すべてが自然素材で作られています。風雨にさらされる屋根は特に経年劣化に対し注意が必要です。(なおこの現場では屋根そのものだけでなく、周辺の木々を刈り取り環境を整えることも建物を保護する上で大事なことであると思いました)

 現代では茅葺き民家の空き家化に加え維持費用※と職人不足で、維持管理もままならない状況です。それゆえにこの度は、貴重な修繕の機会を経験させて頂きましたが…どんな建物でも住まい手(管理者)による異常個所の早期発見と早期対応が維持管理費用を抑えられますので、早く気付く様ご注意いただきたいと思います。

f:id:takumi-2jam:20200610165924j:plain

休憩時間に談笑する茅葺職人たち



佐渡 楽しくうれしい!/木製家具の試作

 某所からお声がけいただき、島内と県内産の杉材で家具を試作しました。(椅子、テーブル、ローテーブルの三種類)
 ・椅子:W550⋆D500⋆H745(座面H410)
 ・テーブルサイズ:W1600⋆D480⋆H700ミリ
 ・ローテーブルサイズ:W1600⋆D480⋆H380ミリ

 杉の無垢材で作られていますので、木の香りがして肌さわりも柔らかいです。ただいつ頃から販売するかは、わかりかねます「^^」>
なおテーブルを二つ合わせて使えば、ダイニングテーブルとしても活用できます。

f:id:takumi-2jam:20200609143125j:plain

 

f:id:takumi-2jam:20200609143213j:plain

 試作時を振り返り「こうしたらどうか、ああしたらどうか」など職人とセッションしたひと時は、家づくりとは違っても楽しくうれしい時間でした。

そんな感じで、前向きに作り上げる大工スタッフがいることを、幸せに思います。

《注》家具は屋内用で試作品のため未塗装です。弊社FBページに6/8初出。6/9加筆してブログにアップ。

f:id:takumi-2jam:20200609145054j:plain



佐渡 移住された若い二人のために/小さな改修工事

初夏を思わせる日差しと爽やかな風吹く佐渡島です。
下記の理由で、久しぶりに長めの記事となります。
中古住宅を購入し、改修工事をご検討されている方たちのお役に立てば幸いです。

『ご縁:出会いと状況』
 購入した中古住宅の気になる腐朽や傷みの修繕で相談をお受けしたのが、お二人が海外から佐渡に移住してきてわずかに日の経った頃。このブログやフェイスブックで、私どもを見つけ連絡メールを受けてからでした。

f:id:takumi-2jam:20200606121811j:plain
 その家は築50年近く経った建物でした。
雨漏りといった大きな不具合がなかったものの、昭和期の新建材が老朽化していました。具体的には床(フロアー材)全体の傷みがひどく、部分的に沈む(フワフワする)箇所が多い状況でした。

f:id:takumi-2jam:20200606122111j:plain
《改修工事前の状況》

『思考1:この家で生活してゆく中、何が一番不自由で、何が今のところ我慢できるか』

 とはいえ島に住み始めたばかりのお二人ですから、修繕・改修にまわす予算的なことも出来るだけ無理の無い様に努める共通認識で、的を絞った改修工事をすることにしました。
 そして生活してゆく中、何が一番不自由か=どこを直せば快適な生活ができるか、を話し合った結果、台所・食堂の改修工事をすることになりました。(その打合せの中、今のところ我慢し、状況を見て将来対応することも話し合っています)

『思考2:修繕(直す)だけでなく改善』
 改修工事に取り組む前に、改修後の快適な生活をイメージして計画することが大切です。改修工事では、住む人の動きやすさや使いやすさを考える良い機会ですから、悪いところだけ直せば快適になるとは言えません。私からの提案も含め打ち合わせを重ねてゆくことで、必ず良い方向に向かいます。

 なお計画を進める際には「何をどこに置く」といった家具や家電のレイアウトも大事な要素です。また改修工事では、仕上がって目にする部分だけでなく、断熱性や耐震性の向上といった仕上がると見えなくなる部分へも配慮と施工が必要となります。

『判断:原寸(現場)は語る』
 計画を煮詰めてゆく過程で図面を幾度か修正しますが、図面が絶対かと言えばそうでもない!と思っています。大筋の部分でお客様と共通認識は出来つつも、立体的感覚での共通認識は図面よりも”原寸で語り合える現場”が一番だと私は考えています。
 そのため私は、作業中の現場での打合せに重点を置いています。私の経験上でスト、コンセントの位置や数、仕上方など現場がある程度進んでから変更が出やすい部分です。

f:id:takumi-2jam:20200606122406j:plain
《壁を外した後、工事関係者でミーティング+お客様現場打ち合わせ》

f:id:takumi-2jam:20200606122918j:plain
《作業中:断熱性の向上》
『仕上:より満足のゆくものに』
 現場の進み具合に合わせ、お客様との打合せもしてゆくことで、住み手・作りて双方納得できるものに仕上がります。

f:id:takumi-2jam:20200606123443j:plain
・改修後の台所・食堂
床仕上げは、国産杉に蜜蝋ワックス。壁はクロス貼り。天井はローコスト化を考慮し既存のまま残し、塗装で白く色付け。

f:id:takumi-2jam:20200606123622j:plain
《台所・食堂から隣の部屋を見る》
重ねた打合せで「ほど良く仕切られたワンルーム」に。
流し台と高さを揃えた腰壁でほど良く仕切りました。
木製建具は、既存のもの(ガラス障子)を再利用し、アクリ板で雰囲気を変えました。

f:id:takumi-2jam:20200606123732j:plain

《和室から台所・食堂を見る》
もともと在った和室の雰囲気を残しつつワンルーム化したことで、広がり、動きやすく仕上げました。お二人が海外から移住し、畳や和風の天井が気に入って残した訳ですが、余計にいじらないことでローコスト化にも貢献しています。
・・・・・・・・
今回はブログご覧の皆様に分かりやすくしようと長くなりましたが、私たちはこんな感じで仕事を仕上げています。
木造住宅の修繕や改修でお悩みの際は、ぜひお声がけください。
長文のご一読、ありがとうございました。

川上工務店 川上巧

f:id:takumi-2jam:20200606130430j:plain





「佐渡 終生過ごせる様にと/小さな改修工事」

晴れ間続く佐渡島
仕事で向かう時の景色と風が実に心地良いです「^^」>

f:id:takumi-2jam:20200602200652j:plain

「終生過ごせる様にと/小さな改修工事」
 小さな改修工事を終え、過日引き渡しをしました。
「これまでほとんど使う機会のなかった部屋を、仕事も出来て、くつろげて、眠れて、晩年は介護も(自分が)受けやすい部屋にする改修工事をお願いしたい」というのが最初の打合せでした。

f:id:takumi-2jam:20200602202334j:plain

工事が始まった頃

 幸いトイレや台所といった水回りはこの部屋に近く動線の心配も少なかったので、出来るだけシンプルに仕上ることを意識し、落ち着く部屋作りを心掛けました。
 なおこの物件は築年数で80年ほど経ち、改修した部屋は(町屋造りのため)中庭だけで外とのつながり(通風と採光)を保っています。その町屋独特の雰囲気も良い感じで残せたら、と私は考えました。

f:id:takumi-2jam:20200602202630j:plain

竣工後

 既存は開口部は広くても薄暗かった部屋ですが、断熱サッシの大きさを以前より小さくしつつも中庭からの光が拡散して明るい感じになりました。
床の素材は、国産ヒノキで蜜蝋ワックス仕上です。
また壁のくぼんだ部分には、オーディオを収納できる仕掛けになっています。

「明日介護でお世話になったとしても、これなら大丈夫!」と冗談交じりでお客様は喜んでおられました。断熱性を上げ、使い勝手が良くなり、落ち着く部屋になったことで、お客様の介護はまだまだ先だと私は思っています「^^」>

「佐渡 島暮らし再考の機会」

たいへんご無沙汰してました。
島は新緑生い茂る景色の中、田植えを終えた景色と澄んだ海が広がっています。

f:id:takumi-2jam:20200531203718j:plain
三密とは程遠い環境の佐渡島ですが、コロナ禍ではマスク着用や手洗い・うがいをはじめ”新しい生活様式”での生活・仕事を続けています。

外出を自粛する中、私的には活字を読み、映画ソフトを見る機会が増えたと同時に、これからの家づくりについても考える事がいろいろ有りました。

(1)リモートワークと島でおうち暮らし

 現実として、コロナ禍で働き方を見直し交代勤務や在宅で仕事をする都会の方も増えました。
 この機会に、地方の再創生!と声高らかに述べませんが、リモートワーク出来る環境を佐渡島でも整えたら実家が残る島出身者だけでなくこの島の魅力を感じる都市在住の人々の移住は、空き家問題の解決にもつながり儚い夢ではない様に思います。
 地域なりの風習・習慣もある中、住む人が支え合って暮らす環境は佐渡島に残っていますので、この機会にご検討いただけますと幸いです「^^」

(2)島に在宅で仕事のできる(しやすい)おうち
 在宅でリモートワークする方にとっては、家庭のプライバシーと業務の守秘を確保できる形が良いと思います。特に小さなお子様の居るご家庭では、配慮も必要になってきます。

 
島の古い家の場合であれば、家が大きいので空き部屋を仕事部屋に活用することが容易な解決方法だと思います。

f:id:takumi-2jam:20200531201822j:plain

また別棟で建つ納屋の活用や空き地にリモートワークできる小さな部屋(空間)を増築する事も可能だと思います。

f:id:takumi-2jam:20200531201516j:plain
 畑向こうの小さな小屋で仕事をし、家に戻るときには新鮮な野菜を摘んでくる…そんな生活イメージも考えすぎではなく、島では容易に出来ることです(^^)

 ただどんな場合でも、リモートワークするには仕事の資料や必要な周辺機器から文具や消耗品までも置けるスペースは必要です。整理しやすい収納も、場を作る際は大事なポイントですね。

f:id:takumi-2jam:20200531202546j:plain

f:id:takumi-2jam:20200531203322j:plain





佐渡 小屋裏からの…

風強く吹き荒れる本日の佐渡島です。
荒天によりカーフェリーの一部欠航やジェットフォイルの全便欠航となり、春彼岸連休の人の動きにも影響しています。

また春になり農作業も動き出す時期ですし、家屋だけでなくビニルハウスなど一次産業の施設の被害が無ければ良いな、と思います。

f:id:takumi-2jam:20200320185338j:plain

過日、某神社の附属建物雨漏りのご相談を受け小屋裏に潜って現場調査してきました。

調査後は、雨漏りの原因と対策(修理方針)について近くの集会所で報告。
建築の専門用語を使うのを極力控え、黒板に絵を描き一般の方に出来るだけ分かりやすく話し、皆さんのご理解いただけたようでした。
今後の展開について未定なこともありますが、関係者の共通認識が出来たことは良いことだと思っています。

f:id:takumi-2jam:20200320191459j:plain
住宅でもそうですが、早期発見と対応(応急処置や修理)は建物を長持ちさせることにつながります。
荒天後は、ぜひ家の見回りをなさってください「^^」/

「佐渡 尖閣湾の土産物店がリニューアルオープン❗️」

 私共で改修工事させて頂いた相川地区にある尖閣湾揚島遊園の土産物店と飲食店が3月16日にそろりとリニューアルオープンいたしました。

f:id:takumi-2jam:20200318203329j:image

 私が担当した設計デザインのイメージは「相川の海と岩と空、そして木々」。現場監理では、無垢材(杉板や米杉)の張り方(タテ、ヨコ、ヨロイ)や色・木目などを意識と工夫をしつつも、出来るだけシンプルな仕上げを心がけました。

 (↑写真の)店内奥にある板壁パネルでは、杉板の源平節無し板を使い、板の白い部分と赤い部分(白太と赤身)の使い方で海から突き出る岩を表現しようと試みました。

……………

さてその飲食店「あげしま海かふぇ」では、リニューアルオープンを機会にメニューも一新。

f:id:takumi-2jam:20200318204149j:image

 佐渡島の素材を使い一工夫したメニューはとても美味しかったです。写真は、私が食べた「ブリっ子メンチバーガー」と「スパイシーいかカレー」です。

 また土産物店で販売しているオリジナル絵葉書(¥200/枚)も可愛くて、ここを訪れる女性のお客様からも好評の様です。


f:id:takumi-2jam:20200318203523j:image

f:id:takumi-2jam:20200318203519j:image

※そろりとスタートしたばかりのお店なので、今後は盛り付け方など多少変わることもあるかもしれません。

……………

コロナウィルスによる自粛ムード漂う昨今ですが、多くの方がこちらに来訪され迫力ある景色を味やお土産と共に楽しんで頂けたら、と思います。

f:id:takumi-2jam:20200318212244j:image
f:id:takumi-2jam:20200318212238j:image
f:id:takumi-2jam:20200318212246j:image

海から岩を眺めるのは、大人でも童心に戻るほど楽しいですよ!‥あくまで私感ですが(^_^;)

f:id:takumi-2jam:20200318212649j:image